■人の想いを反映するホスピタルアート
スウェーデン、ストックホルムにあるCapio S:t Görans Hospital。 (セント・ヨーラン病院)
この病院の緊急病棟には、慌しい医療現場の空気を一変させるような色とりどりの陶板作品が設置されている。
大塚オーミ陶業と赤羽氏の出会いは、2013年、この病院のホスピタルアートのコンペで採用された赤羽氏のデザインを、陶板で制作したいという依頼を受けたことに始まる。
このプロジェクトでは、設置するアートは、表面がフラットで清掃がしやすいもの等の条件が上げられており、作品の提案段階から陶板ですることを計画していた。
陶板は、耐久性があり清掃も容易で、衛生面や安全面における制約のある医療現場で、活用しやすい素材だ。
採用された赤羽氏の提案は、病院スタッフとのワークショップで生まれた図柄を再構築してデザインを完成させるというもの。
陶板にはシルクスクリーンでデザインを印刷する手法をとった。ひとつの版を使い、回転させながら1色ずつ刷っていく。色の透け感などを再現するのに試作を繰り返した。
ワークショップで様々な人が関わることで作品に多くの想 いが反映され、作品をつくるコミュニケーションの中で生まれた偶然さえもアートとして構築されていく。
音楽のジャムセッション(ミュージシャンたちが即興的に演奏すること)を思わせることから、これらの作品は「JAM」と名づけられた。
赤 羽 美 和
サーフェイスパターン / グラフィックデザイン・イラストレーション
武蔵野美術大学卒業後、サントリー宣伝制作部、広告制作会社サン・アドにて多数の広告制作に携わった後、テキスタイルパターンの永続的なストーリー性に魅せられ、スウェーデン国立芸術工芸デザイン大学へ留学、テキスタイル学科修士課程修了。
現在は、サーフェイスパターンを主なフィールドに、デザイナー、イラストレーターとして活動するとともに、対話をテーマに人々を招いたプロジェクトを行う。
切り絵やコラージュなどから生まれる遊びの延長のようなスケッチ手法は偶然性を誘い込み、グラフィックとテキスタイルの両軸からもたらされる多彩なアウトプットは、紙やファブリック、空間に至るまで多岐に渡る。