− 目地確認から焼成、敷き並べ(夏~春)−
■レリーフの新たな表情
彫塑が終わり、表面テクスチュアを入れると、巨大な彫刻の完成です。作業場の天窓から光が射し込むと、レリーフの滑らかな稜線が映え、それは美しいものでした。これまでの作業も、ここへ来てようやく報われた気がします。
左から:建畠先生/建畠先生サイン/鷹尾先生/鷹尾先生サイン)
いよいよ焼成、といきたいところなのですが…そう簡単にはいきません。焼成に入る前に、レリーフを構成するピース各々を、目地幅20㎜ずつあけ、敷き並べる作業が必要でした。彫塑、テクスチュア作業の段階で、叩いたり、撫でたりすることで、表面的には目地が見えなくなっていきます。それを元の目地の部分で切り離し、各ピースの側面を押さえて小口を整えるなど、ひとつひとつ丁寧に仕上げた後、再び目地幅分をあけた状態で敷き並べていくのです。目地の見えない滑らかな美しさから一変、目地をあけ、敷き並べたレリーフたちには、勇ましく力強い新たな表情が浮かんでいました。
■目地確認と修正
目地をあけない状態で彫塑をし、一度仕上げをしています。そこから目地幅20㎜ずつあけると、周囲のアウトラインや彫塑した稜線などは、当然形状があわなくなってきます。目地をあけて敷き並べた後、ふたたび全体を俯瞰しながら、修正を行っていきました。
特に牧神の顔の部分は、目地をあけることによりずれが生じ、バランスが崩れたため、ふたたび鼻の位置をずらしたり、目を入れ直すなどの作業も行われました。この状態で監修者の先生に再度監修をいただき、ようやく彫塑が完了いたしました。
■裏グリ作業
監修を終えたレリーフは、均等に乾燥し、均等に焼き締まるよう、各ピースの厚みを一定(30㎜程度)にするために裏グリ作業(裏側から土を掘り出す作業)を行います。すでにレリーフは乾燥が始まっているので、土が固くなりすぎないうちに、作業を進めます。一方では、目地の間に入る設置金物を取り付けるため、また、外部からその金物を見えないようにするために、側面を少し凹状に削り込んだり、金物用の穴をあけるなどの作業も行っていきました。金物の取付図面についても、検証しながら並行して作成していきました。
■いよいよ焼成へ
入念に検証してはいるものの、これだけ大きなピースを一度に焼くということには緊張感が走ります。これまで事業主や監修の先生方にも何度も足を運んでいただき、私たちも一つ一つ大切に仕上げてきたレリーフです。この焼成という工程により、土の塊だったものが焼きものとなり、50年、100年先まで受け継ぐことができる耐久性を備えるのです。
試作時の検証を元にした、温度、ヒートカーブをプログラミングしたテラコッタ専用のシャトル窯に、所定のピース数量を入れ火入れをし、所定の温度まで上げて焼成します。その後、火を止め冷却に入り、窯を開けることのできる温度まで下がるのを待ちます。「うまく焼き上がるだろうか。」と、期待と不安が募りましたが、窯を開けてみるまではわかりません。
ようやく窯を開け対面したピースは、鮮やかな青が、瑞々しい光彩を放っていました。
■焼成後の敷き並べ検品
焼き上がったレリーフは、再び敷き並べを行っていきます。大きな歪みはでなかったものの、各ピースの形状が異なるため、反ったり、逆に膨らんだりなど場所ごとにピースの形状にずれがでてきました。再度敷き並べて、どうしても目地が開きすぎるなど気になる点については、目地幅を狭めるためにピースを大きく作り替えるなどの作業が必要となりました。
焼いてみないとわからない。それが焼き物の醍醐味であり面白さでもあります。
土の調土から、焼成後の敷き並べ検品をすべて終えるまで約1年半。ようやく6体全てのレリーフが完成し、いよいよ取付に入ることになりました。
協力(敬称略):
朝日新聞社/朝日ビルディング/建畠朔弥/鷹尾俊一/日建設計/竹中工務店
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