― 調土から彫塑へ (春~秋) ―
■春から秋にかけ、三期に分けた製作
「星」の原寸大試作によるモックアップが終了し、製作方法と工法が決定しました。並行して陶土の調合が進められ、本製作が始まりました。レリーフは巨大であり、6体同時に進めると、本体陶土の彫塑に支障をきたすと判断したため、レリーフ6体をそれぞれ2体ずつ春から秋にかけて三期に分け、製作を行うことになりました。
▶レリーフ製作工程(陶土準備~彫塑完了まで)春~秋にかけて彫塑を終えるスケジュール。
第1シーズン:「牧神(鳥)」「月」 2010年4月~7月
第2シーズン:「牧神(笛)」「太陽」 2010年6月~9月
第3シーズン:「牧神(琴)」「星」 2010年9月~12月
■あらためて感じたその大きさ
第1シーズンの「牧神(鳥)」と「月」だけでも約100ピースの土ブロックが必要です。1/10、1/5とマケットを順に製作しましたが、いざ本製作のための土ブロックを敷き並べると、その大きさにあらためて圧倒されます。それは予想していたものの、実物を前にして初めて実感できることでした。
先生方も、「どこから手をつけていけばいいのだろう」、と笑いながらも戸惑っておられました。
本製作のレリーフは牧神1体当り約6mもの大きさとなります。全体の印象や仕上がり感を人間の視覚でとらえるにはあまりに大きいサイズなのです。それを忠実に、加えて大胆に、設置した時のイメージをも考慮して作りあげていく必要がありました。 建畠先生の言葉を借りれば、それは、新解釈でのレリーフ創出ということになります。
マケットはあくまで習作にすぎない。その観点から、先人たちの作品の前で、新しいレリーフを創り出していく。先人たちの想いを感じ取りながら、敷き並べた土ブロック目がけ手を入れる。初回の彫塑作業は、監修の先生方に5日間滞在していただき、精力的に作業に携わっていただきました。
■各シーズンに3度の監修
監修の先生方にはシーズンごとに、彫塑作業、表面テクスチュア作業、最終確認の3回、信楽工場に足を運んでいただきました。節目ごとに監修いただき、その間の作業は当社に任せていただくことになりました。
▶成型機で押し出された土ブロックに対し底面、側面の粗取り。側面(高さ方向はひとまわり大きく粗取りする。その後、図面を1.1倍に拡大し印刷したフィルムの上に土ブロックを敷き並べていく。
▶1/5マケットで測定した各ピースの高さを元に土ブロックの粗彫りを行う。監修者が手を入れるため、削りすぎないようにする。
▶監修者による彫塑。全体を俯瞰し確認しながら彫る。(写真:監修者の鷹尾先生)
▶様々な道具を使用し、テクスチュアを入れていく。(写真右:左から、監修者の建畠先生、鷹尾先生)
■土ブロックを敷き並べての彫塑
土ブロックを敷き並べて彫塑する方法をとったのは、レリーフと対峙しながら作業を進めるためでもありました。計測した通り1ピースずつ正確に削っていけば、忠実な再現レリーフをつくることは可能かもしれません。しかし、先生方、また私たちが、レリーフに対して、そのフォルムやテクスチュアを、手で、目で、体で感じながら作業することにより、新しい作品を創出できると考えました。
▶監修の先生方にも自前の道具を持ち込んでいただき、当社で準備した道具と合わせて作業を行った。荒削りするヘラ、包丁、垂木、テクスチュアを入れる石など、様々な道具を使い製作した。
■暑さと乾燥との戦い
作業が進むにつれ、どのように修正していったかがわかるように定点観測写真を撮り、作業経緯のチェックを行い、また、製作ヤードを見下ろせる場所から観察し、フォルムを定めていきました。最終的には測定した寸法ではなく、全体のフォルムを優先した仕上げを行いました。
■彫塑の仕上げ
意匠面、施工面の検討を同時に行うため、工場内で見晴らしのいい場所にレンガ壁面を再現した壁をつくり、モックアップ(見本製作)を設置。これにより製作面においては、色、テクスチャ等表面意匠のイメージを捉え、施工面では取り付けにおける課題の抽出及び検証材料を確認することができ、自信へとつながりました。
満を持して、いよいよ本製作に取りかかることになったのです。
▶行った作業の写真を時系列に並べ、作業経緯のチェックをする。
▶敷き並べしたところ、琴部が重く感じられたため、左腕を基準に、琴上部へ向かって徐々に厚みを減らしてバランスをとった。
協力(敬称略):
朝日新聞社/朝日ビルディング/建畠朔弥/鷹尾俊一/日建設計/竹中工務店
※本レポート内の画像、及びその他内容の無断転載・転用を禁じます。
=============================