10月6日から滋賀県立陶芸の森 陶芸館で、特別展「信楽に魅せられた美の巨匠たち」
(特別協力:大塚オーミ陶業)が開催されています。当展の見所をご紹介します。
展示は3部構成。SectionⅠ「理想を求めて‐近代思潮と個人作家の挑戦」では、信楽を訪れた陶芸家(富本憲吉・日根野作三・熊倉順吉・河井寛次朗・濱田庄司)が芸術活動のあり方や社会との関わり方を模索した足跡を紹介しています。
また、SectionⅡ「出会いと発見のなかに‐新たな創作への揺さぶり」では、信楽の陶土や産地に根付く技術に出会い、創作活動の原動力とした陶芸家(北大路魯山人・荒川豊藏・小山冨士夫・八木一夫・鈴木治)の作品を鑑賞することができます。
そして、SectionⅢ「産業とアート‐作家を喚起する技術」では、産業と芸術が結びつき、お互いを高めあうこととなった創作活動の一端を取り上げています。ここでは岡本太郎そして横尾忠則とロバート・ラウンシェンバーグの作品を展示しています。とくに、横尾とラウンシェンバーグの作品9点は、すべて弊社で手掛けられたものです。
弊社が培ってきた写真製版技術が、当時グラフィックデザイナーから画家に転身した横尾を信楽に呼び寄せました。その際に制作された2メートル四方を超える作品が彼の精神世界へ来場者をいざないます。
(写真1)
また、ラウシェンバーグは、ロッキープロジェクト※1の出発点として弊社を訪れ、大型陶板作品の制作を試みました。これもセラミック(やきもの)?と驚きの隠せない作品5点(写真2)を一堂に展示しています。
「・・・・・・素材としてのセラミックとの出会い、それはひと言でいえば「じつにたのしいもの」なのだ。」※2と語るように、ラウシェンバーグにとってセラミックは、自身の創作意欲をかきたてる素材・技術であり、弊社にとって彼は、挑戦の機会を享受できる存在でした。こうしたお互いを高めあう関係性が信楽で築かれ、優れたアートとしての表現の向上に貢献したといっても過言ではありません。
作品を鑑賞される際には、是非ラウシェンバーグのサインを探してみてください。彼の名前を日本語で表現した「羅有紫煙漠」という文字が見つかるかと思います。
展覧会で展示されているラウシェンバーグ作品の多くは、展覧会の開催まで弊社ショールームに展示されておりました。展示環境の違いで、作品の印象がこれほど変わるのは大きな驚きでした。
展覧会では、信楽での作陶作品以外の代表作も展示されており、それぞれの陶芸家や芸術家が巨匠と呼ばれる所以を知ることができる内容にもなっています。巨匠たちの視点をとおして、信楽という産地の懐の深さや多様性が改めて実感できる展覧会です。この機会に是非、お立ち寄りください。
※ 上記は展示品の一部となります。
(写真2)ダート・シュライン(西)、ゲート(西)
※ 日本(信楽)で制作された「東・西・南・北」の4種16件のうち、(4件)は滋賀県立近代美術館に収蔵されている。
■ 展覧会パンフレット
作家ポートレイト
[撮影] 富本憲吉=土門挙/日根野作三=大鹿廣明/北大路魯山人=土門挙/荒川豊藏=加納陽治小山冨士夫=三枝朝四朗
[写真提供] 富本憲吉・北大路魯山人=土門挙記念館/熊倉順吉=熊倉千織/河井寛次朗=河井寛次朗記念館/濱田庄司=濱田庄司記念益子参考館/八木一夫=八木明/鈴木治=株式会社新潮社/岡本太郎=川崎市岡本太郎美術館/ロバート・ラウシェンバーグ=大塚オーミ陶業株式会社/横尾忠則=横尾忠則現代美術館