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高松塚古墳壁画複製製作 
-鮮やかによみがえる「飛鳥美人」-

これまでとは違う、新たな再現への挑戦

 これまで私たちは、「セラミックアーカイブ」として、やきものの特性である耐候性、耐久性と、大塚オーミ陶業の独自技術により表現された色彩や質感を併せ持つ、さまざまな複製を製作してきました。
 2019年、「高松塚古墳壁画」の中でも特に有名な女子群像「飛鳥美人」が描かれた西壁壁画を、最新の3D技術を活用し、陶板に置き換えるプロジェクトに挑みました。

 今回の製作での大きなポイントは、「過去(壁画発見当時)の色彩再現」と現在の凹凸データと過去の画像データに基づき、それらを比較検証した上で「過去の凹凸を再現」することです。
 今までの複製は、文化財の「今」の状態を陶に「置き換える」複製でした。
 しかし今回は、「オリジナルが(カビによる汚染などで)劣化した今、発見当時の状態を復元し、現在の状態も加味して立体的にも再現する」(橿原考古学研究所 青柳所長談)という、新たな複製を製作することが求められました。

「データ」と発見当時の「記憶」から壁画の表情を探る

 そんな、未だかつて誰も見たことのない、新たな複製への取り組み。
 だからこそ、壁画をどのように陶で複製するのか、要素の整理や理解を深めるため、実際に壁画発見当初の古墳石室で調査を行い、直接壁画をご覧になった専門家や、壁画の修復作業に当たられた技術者の方々に助言を頂きながら製作を開始しました。

 橿原考古学研究所と奈良文化財研究所がそれぞれ計測した3Dデータと、1972年の壁画発見当初に便利堂の協力により撮影された画像データを特別に提供頂きました。また、色彩の見本となる数冊の資料を提供頂いたほか、データだけでは分からない壁面の表情など、専門家の記憶をもとに、何度も試作と打ち合わせを重ね、製作に反映していきました。

培ってきた製陶技術と3D技術の融合
よりリアルな表現を目指して多様な要望に向き合い真摯に応える

 今回の複製陶板の製作では、3D技術を用いて直接陶板を削る方法(切削加工)を採用。その切削加工のための3Dデータの編集も自社で行いました。
 専門家の方々に、データの編集方法が適切であるか、一つ一つ確認頂きながら作業を進めました。特に、1972年発見当初の高松塚古墳壁画の写真と最新の3Dデータに差異がある部分については丹念に比較し、協議。3Dデータを1972年の写真を元に補正し、「発見当時の壁画の再現」を出来る限り追求しました。

 凹凸の表現と同時進行で、高松塚古墳壁画が発見された当時の色彩や質感についても検討を重ねました。
 「当時の石室内は湿度がきわめて高く、光を反射する感じであった。」「赤い服の女子のスカートは、青色一色ではなく、青色と紫色である。写真では印刷しきれないが、陶板ではその色差を反映してほしい。」など、専門家しか知り得ない貴重な意見をもとに何度も補色を行い、「発見当時の色彩再現」を目指しました。

鮮やかに蘇った「飛鳥美人」!
貴重な文化財を陶板に置き換えることで生まれる新たな可能性

 こうして出来上がった陶板は、凹凸表現の誤差1㎜以下の精度で仕上がり、専門家の方々からも「生々しいですね。私が見ていた印象に近いですね、素晴らしいものができました。」「実物だと触れながら話したりなんか出来ないですからね。」と評価いただきました。
 2020年3月、修復技術者や関係者の尽力により、文化庁監修のもと、高松塚古墳壁画の修復が無事に終わりました。しかし、原物は劣化の進みやすい漆喰の上に描かれている為、常設での展示公開は難しいとされています。

 そのような中、48年前に保存された「記録」と先生方の「記憶」から再現した「陶板」も、発見当時の壁画の姿を伝える貴重な存在になり得るのではないでしょうか。
 「セラミックアーカイブ」は、文化財の「今」を記録するだけではなく、文化財の過去を蘇らせ、後世へ伝え続けることが出来る。そんな陶板による複製の新たな可能性を、私たちは感じています。

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